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春日太一の「雪中行軍な人生」

時代劇・日本映画・テレビドラマなどの研究家・春日太一のブログです。

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仲代達矢さんと平幹二朗さん


仲代達矢さん主演「俺たちは天使じゃない」。
平幹二朗さん主演「王女メディア」。
今の日本演劇界の二大名優のお芝居をこの二ヶ月のうちに両方観ることができた。

若い頃のイメージだと「剛の仲代、柔の平」という感じだけど、
今はそれが逆になっている。

仲代さんのお芝居は驚くくらいの柔。
まるで軟体動物かのように柔らかく、動きと表情が千変万化する。
とにかくお茶目かつユーモラスな演技で、
客席を爆笑の渦に巻き込んでいく。
ここにきて完全に新境地を切り開いたといえる。
役者としての幅の広さ、引き出しの多さに改めて感嘆する。

一方の平さんは、ひたすら剛。
毒々しいまでの狂気・妖気を研ぎ澄ましていて、
他を寄せ付けない恐怖感すら漂う。
この世のものとは思えない・・・
・・・のだが、その感情はどこまでもストレートにぶつかってくる。

二人とも、共通していることがある。
それは今の自分自身を限界まで高めて、
観客にガチンコの勝負を挑んでいる・・・ということ。
そこには「名優」としての名声に対する甘えも驕りも微塵もない。
「現役の役者」としての矜持とプライドが、
80歳を越えてもなお新たな姿を観客に呈示する姿勢を生み出している。

「むかし凄かった役者」ではなく「今も凄い役者」。

求道者。この言葉がこれほど似合う役者は、
今の日本でこのお二人をおいていないだろう。

どちらも、ただいま全国公演中。

絶対にライブで触れておくべき。
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素晴らしき仲代達矢さん!

仲代達矢さんへのインタビューが先週、無事に・・・
・・・というより、最高の形で完了しました。
あまりに、あまりに濃密な全9回、約13時間でした。

とにかく仲代さんの記憶は凄まじく、
こちらの用意した質問に対して必ず完璧にお答えいただけるので、
私としましても、毎回準備のし甲斐があるというものでして。

次々と繰り出される幾多のエピソードはもちろん、
映画黄金期の現場を共にされてきた名監督・名優たちについて、
「仲代さんのインテリジェンス」というフィルターを通して接することで、
今までに知り得なかった彼らの特質を知ることができ、
日本映画史をより立体的に捉えれらるようになりました。

考えてみれば、
仲代さんは名監督たちの「MAXの作品」に出演され続けたんですよね。
つまり、その撮影現場では最高の演出と最高の演技がぶつかり合ってきたということであり、
彼らの最も濃厚なエキスがそこにはあるわけです。
文字通り、「命がけ」で映画作りに挑む方々のお話に、
毎回、畏怖と感動にわが身を震わせながら拝聴してきました。

「岡本綺堂に昔話をする半七老人」
今回の両者の関係を仲代さんには、そうなぞらえていただけました。
そのお言葉を旨に、私も全力で「作品」へと昇華させていく所存です。

全面的に御協力いただきました無名塾の皆様、
そして、
惜しみなく「ホンモノの映画人」たちとの仕事の全てをお話しくださった仲代達矢さん。
ほんとうに・・・ほんとうにありがとうございました!
私は果報者です・・・。

読者の皆様には、
PHPの月刊誌「Voice」でただいま短期集中連載中の
「仲代達矢が語る昭和映画史」(全6回予定)、
および、超大幅な加筆・再構成をした上で来年に刊行する予定の書籍にて、
お目にかけてまいります。
(連載と書籍は異なる構成になりますので、
双方とも別作品としてお楽しみいただけるようにさせていただく予定です)

旧作日本映画の熱心なファンでなくとも、
その製作現場の熱い息吹と濃密な人間模様は、
必ずやお楽しみいただけるかと。

ぜひとも、よろしくお願いいたします。

またもや好きな役者が・・・

佐藤慶さんがお亡くなりに。

個人的にはちょうど昨夜、
東映チャンネルで『日本の首領・野望編』を見ながら(何度目だ!)、
小池朝雄との関東連合・極悪タッグに戦慄したばかりだったんですよね。

とにかく大好きな役者さんでした。

登場したら、必ずたたでは済まされない何かが起きる。
あの不穏な雰囲気がたまりませんでした。
 
『必殺』での一連の物凄い悪役とか、
『炎立つ』の源頼義とか、
『草燃える』の比企能員とか、
『忍者狩り』の近衛さんの参謀役とか、
『暴動島根刑務所』の看守長とか、
一連のNHK経済ドラマの銀行頭取とか、
『写楽はどこへ行った』の写楽とか、
『鬼の棲む館』の旅の僧侶とか、
『本陣殺人事件』(テレビ版)の潔癖な長男とか、
『やくざの墓場』の嫌味な上司とか、
『蘇る金狼』の社長とか、
『水戸黄門』の第一話で切腹させられる家老とか、
『水滸伝』のラスボスとか、
『斬り抜ける』の森嘉兵衛とか、
『子連れ狼』の烈堂とか、
『天城越え』(テレビ)の職工とか、
『真田太平記』の伊賀忍者の頭領とか、
『白昼の死角』の切腹する会社重役とか、
『野獣死すべし』の武器密売人とか、
『鬼輪番』のサディックな悪役とか。

枚挙にいとまないほど、その名演は挙げられる。

・・・が、何か大事な作品を忘れているような・・・。

「これは凄い!」

と心から唸った芝居が他にあったはずなんだけど、
どうしても思いだせない・・・。

・・・他に何か重要なのがありましたよね?
(大島渚の映画は除く)

ここに挙げた中だと森嘉兵衛、源頼義、「仕置屋稼業」全覚がTOP3ですかね。
でも烈堂も素晴らしかったなあ・・・

熱すぎる漢たち

先ほど「座頭市theLAST」のパンフ用に
殺陣師の菅原俊夫さんにインタビューさせていただきました。

菅原さんは深作欣二監督や工藤栄一監督と数々の名作を残してこられた大ベテラン。
プロ中のプロです。

そんな菅原さんが、惚れ切ったのが香取慎吾。
彼のことを語る菅原さんの熱さは、深作監督を語る時に匹敵するもの。
その言葉に御世辞や嘘は全く感じられませんでした。
それだけ男惚れしたということなのでしょう。

御話をうかがう中で、香取慎吾の役作りに震えました。
そして、その体を張った執念に頭が下がりました。

最初に彼が座頭市を演じると聞いた時に、
何も知らずに批判した自分を心から恥じます。

だからこそ、皆さまにも知ってもらいたい。
いかに香取が凄まじい男なのかを。
勝と同じ座頭市の感覚を彼はつかんでいた。
その上で勝新ですら出来なかったことに、彼は果敢に挑戦した。

そのことを菅原さんのインタビュー原稿で余すことなく書く予定でおります。

批判される方は、それを読んだ上で批判していただけたら幸いです。

私は正直、香取慎吾がここまでの根性と情熱の持ち主とは思いもしませんでした。
もう一度、改めて「座頭市theLAST」を観てみたく思いました。

同い年の座頭市

気になる記事を見つけました。


~~~~~

座頭市・慎吾「勝さんの声が聞こえた」

http://www.daily.co.jp/gossip/article/2010/03/26/0002812499.shtml

降りしきる雨の中、勝さんの墓の前で香取は手を合わせた。
 「座頭市をやらせていただきました。これから公開に向けて頑張ります」。そう話しかけると、「おー、そうかそうか、オレも見るよ」と聞こえた気がしたという。天からのエールを受け「グッと来るものがあった」と改めて、作品への思いを強めていた。
 「座頭市」は、勝さんの代名詞とも言うべき作品。ライフワークとして、1962年から89年までの26作品で主演、監督を手がけた。その完結編となる「‐THE LAST」で、市を演じる香取は、けじめとして自ら墓参を提案。この日、ようやく勝さんと“対面”することができた。
 撮影前から「勝さんの存在は大きかった」と相当なプレッシャーがあったという。しかし、自らの“市”を作り上げることを決意し役作りに励み、“慎吾市”を作り上げた。特に、約1年かけて特訓した殺陣は「120点。完成したものを見て、自分でもすげえなと思えた」と納得する出来栄えに。墓前にも「とにかく思い切って一生懸命やりました」と胸を張って報告した。

~~~~~

こういう芸能関係のニュースで久々に爽やかな感動を覚えました。

最近の若手俳優では珍しいくらいに謙虚な姿勢ですよね。
これがただの宣伝パフォーマンスでないのは映画を観れば分かります。
香取慎吾は目いっぱいのリスペクトを込めて真摯に座頭市を演じていました。

観てもいないのに「ジャニーズだから」という理由で悪く言うのは、
丹精を込めて映画を創った人たちに失礼なことだと思う。
(映画を観る前の自分もそうだっただけに、自分自身への反省も込め)

「天国の勝新が怒ってるぞ」
みたいなことを言うファンも少なからずいるでしょうが、
自分の遺志を丹念に掬いあげ、
今の観客にぶつけようと本気で戦う人たちを
勝さんがどうして怒るものか。
むしろ暖かく見守ってくれてるんじゃないかな。
そう思わせるだけの雰囲気が、映画の画面に出ていた。
詳しくは→http://jidaigeki.no-mania.com/Entry/34/

「ジャニーズだから」と根拠ないレッテルで批判するのは、
「酔っ払いの勝新が好き勝手にやっている」という偏見で、
彼を不当に扱ってきたかつてのマスコミや映画ジャーナリズムと同じ。

余計な偏見なく、マッサラな目で観てあげてほしい。
「勝なら~」「勝の方が~」「勝に比べて」
そういう凝り固まった映画の見方こそが、
映画の可能性を追求し続けた勝さんが最も否定したかったもの。

『山桜』の東山もそうだったけど、
驚くくらいに真摯なんだよね、彼らは。

香取慎吾が墓前で聞いた声は本物だと思う。
で、映画を見終えた勝さんからいろいろとアドバイスを受けることになるだろうけど、
彼ならそれを真っすぐに受け止めることができるでしょう。

座頭市を間に挟んで勝さんと語り合う同い年の男。
ホントにうらやましい。

香取慎吾には拙著『天才 勝新太郎』をぜひとも読んでほしくなってきた。
映画の知識がなくても分かるよう書いたつもりだから、
何か感じてもらえるものがあるはずなんだけど・・・

藤田まことさん……

藤田まことさんが今朝お亡くなりになりました・・・・・・。

藤田さんとは「剣客商売」を取材させていただいた時に
何度かお話しをさせていただきました。

当時は、ほとんど実績のない駆けだしの身でしたが、
「テレビ時代劇史の研究をしている大学院生」という肩書を面白がっていただきまして。
スタジオやロケ先で撮影の合間に私の姿を見つけては隣に来られて、
いろいろと芸談をお聞かせ下さった思い出は、一生の宝物です。

同時に、どこの馬とも分からない私のようなチンピラにもお気を使われる姿に、
50年近くを芸能の第一線に立ち続けてきた男の凄味も感じました。

ある男から
「藤田さんからの聞き書きを中心に据えた書籍を」
という企画が持ち込まれたということもありました。
が、
持ち込んできた人間の薄汚い心根に嫌気がさして、
途中で降板してしまったんですよね・・・。
もう少しマトモな編集者と組めていたら、
さぞや充実した聞き書きが出来ていたろうに、と思うと、
未だに悔しい想いを引きずっていたりします。

今日はこれから、「必殺仕置人」の第一話を拝見して、偲ばせていただきたく思います。

いきるな。いきるな。男三十過ぎていい格好しようなんざ、落ち目になった証拠よ

中村主水に、もう一度お会いしたかった・・・。

大滝秀治を見よ!

文春の編集担当I女史に誘われ、
昼から劇団民藝の舞台「巨匠」の千秋楽へ。

いやあ、凄かったです、大滝秀治。

余計な芝居を入れずに、ひたすらシンプルに伝える姿勢に感銘。
ちょっとした動作だけで一瞬のうちに舞台の空気を変えてしまうといいますか。
空間から他の一切が消えて、
まるで客席の自分と直接に相対しているような錯覚に浸り、興奮してしまった。

さすがに「勝新太郎が最も信頼した役者」の一人だけある。
(ちなみに大滝は勝の初監督作「顔役」で初めて映画の大役に抜擢。
以来、本格的に映画界に参入し、
勝の第二回作「折れた杖」でもラスボス役で出演。
「子連れ狼」との東宝二本立て時代は大滝を若山富三郎と取り合いになったという)

なんか最近の舞台は内輪受け狙いの小芝居ばかりで辟易していただけに、
久々に本物の迫力を体感できて幸せだった。

ここんとこの舞台って、
「いかに細かく埋めていくか」
ばかりに気が行き過ぎている。
でも、そうじゃないんだよなあ。

じっくり溜める。じっくり伸ばす。
たたずまいだけで魅せる。
そういうユッタリとした芳醇な空間こそ舞台に欲しい。

ホント気ぜわしい芝居ばかりになりました。

今の役者さんたち、つまらんエッセイやブログを書いてるヒマがあったら、
こういうレジェンドたちの舞台や芸談に触れるべきかと。

「昔のこと」ってだけで敬遠してたらモッタイナイ!

今とは比べものにならないほどの刺激がそこにはある。
今かかえている答えのヒントはいつも過去にある。

最低限、私はいつもそんな思いを込めて本を書いていたりする。

「昔、こんなに命を賭けた人(たち)がいたんだよ。
あなたたちはどうなの?
もっと戦おうよ!」
と。

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時代劇・日本映画・テレビドラマの研究家です。

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