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春日太一の「雪中行軍な人生」

時代劇・日本映画・テレビドラマなどの研究家・春日太一のブログです。

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入江悠監督との対談

放送中のWOWOWオリジナル時代劇「ふたがしら」をめぐり、
入江悠監督と対談をさせていただきました。

WOWOWの無料動画サイト「W流」にて全3回がUPされております。

パート1
http://st.wowow.co.jp/detail/7016

パート2
http://st.wowow.co.jp/detail/7017

パート3
http://st.wowow.co.jp/detail/7018


入江監督は時代劇に、そして東映京都撮影所にいかに挑んだか。
その答えは・・・
私の書いた「あかんやつら」「なぜ時代劇は滅びるのか」へのアンサーでもありました。
ぜひともご覧ください!!

こういう形で(言葉ではなく作品として)現場からアンサーをいただけるというのが、
書き手としては最も嬉しいこと。
しかも同年代の監督から。
入江監督が時代劇のことを本気で考えているということがよく分かる対談でした。

今後とも、いい感じで刺激し合いつつ未来へ繋いでいけたらなあ・・・と。

入江監督の時代劇への取り組み、今後とも応援していきたく思います!
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【長文】「鬼平」の現状に想うこと

1月4日にフジテレビ系列で「鬼平犯科帳スペシャル 泥鰌の和助始末」が放送されました。

個人的には、大好きな石橋蓮司さんの「老い」の芝居を堪能できたんで、
シンプルに満足していたのですが。
やはりマニアの方々は厳しい。

それで、「鬼平」ってなんだろう、「時代劇」って何だろうと考え込んでしまいまして。
キッカケは近藤ゆたかさんによる、以下のツイート。


~~~~~
(※前半は無関係な話なので略)鬼平もオリジナルやっちゃダメとか言うなら、もう『おにへい』にしてアニメでやるしかないじゃん、現状では。それか東京で撮るとか、京都でなら30〜40代の監督に撮らせるかだね。だって、鬼平50までしか生きてないんだし。 via ついっぷる for iPad 2013.01.05 01:48

もう「今の感覚がどう原作を捉え直すか」に活路を見出すしかないのかもしれないのでは? と思ってしまう。 via ついっぷる for iPad 2013.01.05 01:53
~~~~~

現状の「鬼平」に関して全否定ともとれる、かなり辛辣な内容でした。

新潮45の昨年4月号の拙原稿をお読みになられた方ならおわかりかと思いますが、
近藤さんの主張の基本にある想いは、自分自身もうなずける部分がありました。
が、一方でどこか釈然としないというか、モヤモヤしたものが。

で、何度か近藤さんには質問のリプを飛ばさせてもらったけど、
話は平行線のまま。
それもそのはずで、肝心の私自身が、自分で自分の感情を把握できてなかったわけで。
その点では、近藤さんには御迷惑をおかけしました。

で、昨夜(というか今朝か)は自分なりの総括として、
とりあえず以下のようなツイートをしました。


~~~~~
時代劇は「現在進行形のエンターテイメント」だと思っているし、その意味において「鬼平」は功罪の「罪」の部分も大きいということは折に触れて述べてきた。でも、時代劇の表現が本当の意味で「今」に追い付いた時、その時代劇を愛せるかどうかは自信が全くない。なぜなら「今」が大嫌いだから。 via Keitai Web 2013.01.05 06:27

正直な話、時代劇との距離のとり方が最近全く分からなくなっている。「老人から時代劇を取り戻せ」を旨に生きてきた身としては、昨夜の近藤さんのツイートには深くうなずけるところがあった。ただ、自分は「今」の役者も作り手も全く信用していない。だから、つい絡んでしまった。 via Keitai Web 2013.01.05 06:37

「怪」の失敗がトラウマになって京都での時代劇製作はさらに保守化したという側面がある。「時代劇の伝統芸能化」は、それに代わる表現を「マニア受け」以上のレベルで提示できていない次世代に責任があると思う。「時代劇の世代交代」は作品で証明して、初めて成し遂げられる。 via Keitai Web 2013.01.05 07:05
~~~~~

で、一晩寝て、スッキリした頭で考えたら、モヤモヤしていた感情の正体が見えてきました。
以下は、それを例え話として言語化したものです。

~~~~~
周辺の開発の波に耐えながら、
繁華街の目抜き通りで昔気質の職人たちが
ガンコにノレンと味を守り続けてきたことで有名な老舗トンカツ屋。

その店に行った帰りの《グルメ》な客から、
「店構えが古い」
「今風の創作料理を出せ」
「若い奴に揚げさせろ」
「そもそも揚げものなんて嫌いだ」
「こんな店つぶれちまえ」
とかいう文句を聞かされる・・・。

昨夜の近藤さんのツイートって、ようはそういうことなんですよね。

いくらなんでも、その文句はお門違いでしょう。

だって、そこがそういう店だということは、
行く前から分かってたことでしょ、っていう。

周辺に食べ物屋がそこしかなくなった状況を憂いたり怒ったりするのなら共感できるし、
新たにその繁華街に自分好みの店が出来るように願うのなら理解できるけど。
その老舗の店に「俺の好みに合わせたものを出せ」というのは理解に苦しむ。

で、反論は「初代店主はもっと尖ってた。その味に戻れ」みたいな。


ちなみに初代の時代は五年。今の店主は二十年以上。

しかも初代の頃は繁華街は食べ物屋だらけだった。
今はその店一軒だけ。
あとは、若者向けのオシャレな店と安い雑貨屋が建ち並ぶ。
あの頃と今とでは、状況がなにもかも違う。

今の店主の姿勢は、はたして「守り」に入っているといえるのだろうか。
若者向けの店ばかりが建ち並ぶようになった繁華街で昔の味に固執して、
それでもなお行列作るのってのは、時代に対して「攻めてる」とも映る。


その壮絶な戦いの葛藤に想いを馳せてこそ、《グルメ》なのではないだろうか。

あと、本気でその店に改善を望むなら、
その職人に直接文句を言うなり、
若い丁稚さんつかまえて独立をもちかけるなり、
すればいいと思うんだよなあ。

ちなみに、自分も以前はその店に言いたいことがあったから、
揚げてる本人に直接いろいろと批判的なことも言ってきたけど。
今はその店の頑固な姿勢、凄くカッコよく見えてる。
だからもう、何も言わずに黙って食べ続けたい。


まあ、少ししたらその職人さんたちもみんないなくなりますから。
その間、自分は「古臭い」と文句つけるよりも、
昔気質の味の名残りを楽しみ続けたいと思う。



・・・以上が、「鬼平」の現状、ならびに「鬼平」批判派の方々に対する、
私の偽らざる想いであります。

(自分も含め)マニアな人たちはつい新奇性に価値を求めがちだけど。
そのジャンルから「メジャー(=マニア以外の老若男女にも広く認知・信頼)」なタイトルが消えたら、
ジャンル自体が瓦解する。
「鬼平」は正月のゴールデンでスペシャルを張ることのできる希有なメジャー時代劇。
それを前提としない批判・批評には何の価値もないと思います。

最近の「時代劇報道」に思うこと

先日のNHK「クローズアップ現代」で「京都の時代劇事情」みたいなのを伝えてましたね。

スタジオゲストの山田洋次監督のお話にはいくつか鋭い御指摘もありましたが、
番組自体は総じては「衰退しまくりで未来のない高齢者向け産業」みたいな捉え方。
完全なネガティブ報道で腹が立ちました。

自分も少しは取材に協力してしまったことを激しく後悔しております。
嫌な予感がして途中で降りたのですが、
その嫌な予感が的中してしまいました。

「水戸黄門」終了報道以降、各マスコミで時代劇のことが取り上げられましたが、
まあ、みんな大体そんな感じの伝え方でしたね。
なんかもう、思い込みというか固定観念だけというか。

マスコミの皆様。
時代劇に関して記事・番組を作られる際は、
せめて最低限の歴史くらいはご自分で調べられてください。
そうすれば、
「勧善懲悪のワンパターン」「高齢者向け」「古臭い」
のが時代劇の特徴の本質でないのはお分かりいただけると思いますので。

とりあえず、あの番組をキッカケに思うところを勢い任せでツイッターに書き込んだので、
こちらにまとめてコピペしておきます。

~~~~

「水戸黄門」終了以降、大手メディアがこぞって「時代劇の現状」を取り上げるようになったけど。ほとんどが通りいっぺんの思い込みを垂れ流しているだけで、きちんと問題点を整理した分析が全くないのには正直、失望した。 via Keitai Web
2012.01.12 13:41

 「ジャンルとしての時代劇」「テレビの中での時代劇」「映画としての時代劇」「京都での時代劇製作」。重なり絡み合っているけど、実はそれぞれの本質的問題点は別個にある。それを精査せず、思い込みだけで上っ面をなぞるだけだから、薄っぺらい論考になる。 via Keitai Web
2012.01.12 13:49

 少し考えれば分かることなのに、時代劇というだけで思考停止に陥り固定観念しかなくなってしまう。大手メディアは全く時代劇のことなんて本気で考えてない。それだけは改めて痛感できた半年間。 via Keitai Web
2012.01.12 13:51

 新聞記者もテレビ局のディレクターも少しでもジャーナリストとしての気概があるのなら安っぽいノスタルジーに逃げるんじゃねえっつうの。 via Keitai Web
2012.01.12 13:54

 奴らにとっては枠を埋めるネタの一つに過ぎないかもしれないけど、そこに人生を賭けてる人間もいるんだ。ただの興味本意で邪魔しないでくれ。影響力がないぶん、ネット番長たちの方がまだマシだ。 via Keitai Web
2012.01.12 13:56

 中途半端な取り上げで誤解を振りまくくらいなら、なにもせん方がエエ! via Keitai Web
2012.01.12 14:01

 自分を苦しめてきた時代劇に対する偏見と差別の実体を見させていただきましたよ、ええ。 via Keitai Web
2012.01.12 14:15

 時代劇の歴史ってその大半は「新しい表現の開拓の歴史」なわけで。長く続いた一部の番組だけの印象で「勧善懲悪」「ワンパターン」「年寄り向け」だの、イイ加減なレッテルを貼らないでほしい。メディアで時代劇を取り上げる人は最低限「伊藤大輔」「黒澤明」「五社英雄」くらいは知っておいてほしい。 via ついっぷる/twipple
2012.01.12 18:15

 まだキチンと検証したことではないけど。ある時点で時代劇の表現の開拓は止まり、過去の再利用になっていった。そこには作り手側の甘えも多分にあったように思える。「テレビ局が枠を保証してくれている」ことへの甘え。小手先の工夫はあっても、「現代」と正面から向き合う作り手はどれだけいたのか。 via ついっぷる/twipple
2012.01.12 18:31

NHKのDから「スタジオゲストには時代劇に通じた大物文化人を呼びたい。誰かふさわしい人を知らないか」と聞かれたので、その段階で「ああ、専門家による分析・解説を交える気はないのね」と落胆したけど、とりあえず山田洋次監督・能村庸一P・杉田成道監督のお三方を推薦させていただいた。 via ついっぷる/twipple
2012.01.13 01:11

取材開始当初からNHKの態度・姿勢には不満があったけど、「全国放送で流されることで少しでも太秦の宣伝になれば」と思って協力した。ただ、あまりに不遜だったんで途中で協力を絶った。取材時は「十分に戦える力がることを紹介してほしい」と何度も釘をさしたんだけど、まあ、自分が甘かった。 via ついっぷる/twipple
2012.01.13 01:25

山田洋次監督の「国の支援が必要」という発言に批判が多かったようだけど。「作りたい人」「見たい人」は多いけど「金を出したい人」が少ないのが問題という現状を考えれば、行政が間に入るしか時代劇の製作状況を正常化させる道はないように思う。もちろんそれは旧来型のバラマキでは意味はないが。 via ついっぷる/twipple
2012.01.13 09:50

大事なのは「支援」といっても「文化としての保護」じゃなくて「産業としての振興」。「文化として保護」しちゃうと「年寄り向け衰退産業」というレッテルを恒久化させるだけ。具体的な方策は昨年、既に京都市には伝えたけど。とにかく誤解に基づいた思い込みで勝手に滅ぼされるのは阻止せんと。 via ついっぷる/twipple
2012.01.13 09:59

支援のし方が酷かったせいというのもありますけどね。甘やかし型支援で腐らせてきた RT @katsudobenshi: 日本は国の支援に対するアレルギー反応が妙に強いですよね。独立独歩の精神は大事ですが、諸外国のように、国民が国を利用して何が悪い、くらいの意識も同時に欲しい所です。 via ついっぷる/twipple
2012.01.13 10:05

自分としては時代劇は「古典芸能」では全くなく「現在進行系のエンターテイメント」。だからこそ、こんな現状だからこそ、作り手たちにはもっとシッカリしてもらいたい。先人たちの育んできた「時代劇」という豊かに発想を羽ばたかせることのできる表現手段を、世間のレッテルから解放するためにも。 via ついっぷる/twipple
2012.01.13 10:58

それにしても。取材を受ける際、「時代劇のこと、何も分からないから教えてください」と平然と言ってくる記者やDだらけだったのには驚いた。恥ずかしくないのだろうか。「ここまで調べましたが、こことここが分からないので教えてください」が普通な気もするが、自分がおかしいのかな。 via ついっぷる/twipple
2012.01.13 13:00

京都組!

「時代劇研究家・春日太一」の故郷でもあった映像京都は昨年、
惜しくも解散してしまいました。

しかし、先ほど嬉しい報せが届きました。
映像京都の中堅・若手スタッフたちが中心になって、
新たなプロダクション「株式会社 京都組」を立ち上げたとのこと。

代表取締役には山下耕作監督のご子息でもある山下智彦監督。
いただいたお手紙には

「旧・映像京都から、映画作りの技と気概を受け継いで、
ここ京都太秦の地より、未来へ向けて前進してまいります」

と実に頼もしい志が記されており、
なんだか我が事のように嬉しいです。

相談役には西岡善信さんや中村努さんのお名前もあり、
彼らレジェンドたちがいろいろと支えになってくれるのでしょう。

私も微力ながら、なんらかのお役に立てればと思っております。

時代劇を愛する全ての方々。
京都の時代劇産業の未来のため、
「株式会社・京都組」をみんなで応援していきましょう。

映像京都が・・・

各メディアの報道で御存じの方も多いとは思いますが、
この8月31日に映像京都が正式に解散となりました。

私もつい先日、西岡善信さんからお手紙をいただき、
あまりに辛い決定を知りました。
わが身を引き裂かれるような思いでおります。

今から8年前に修士論文の研究取材のために映像京都の撮影現場に半年間も密着させていただき、
そのスタッフワークの見事さに感動して
「この素晴らしさをより多くの方に分かってもらいたい」
と勝手に思ってしまったのが、時代劇研究家・春日太一の原点でした。

スタッフの皆さまには本当にお世話になり、
大学では絶対に知り得ない充実した勉強をさせていただきました。

いろいろな感情が去来して、まだキチンとしたことは書けそうにありません。
でも、ここ数年の京都で何か起きているのかは、一度どこかでまとめ、
憶測とは違う現実を皆さまに知っていただく必要はあると思っております。
でも、今はとても客観的に書ける精神状態ではありません。
自分にとって、故郷が消えるようなものですので・・・

組織がなくなっても、遺してこられた作品は永遠に残ります。
そして、その偉業は微力ながら私も後世まで語り継いで参ります。

私の最初の著書となった「時代劇は死なず」は、
「苦しい時代に踏ん張ったから、今まで生き残ってこれた」
というテーマで書きました。
でも、結果的には「失われた文化の記録」になってしまいました・・・

今はただ、映像京都の方々への感謝の念とともに、
過ぎ去った日々へ静かに想いを馳せたく思います。

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職業:
著述業
自己紹介:
時代劇・日本映画・テレビドラマの研究家です。

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