時代劇・日本映画・テレビドラマなどの研究家・春日太一のブログです。
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はじめまして! ツイッターでの水道橋博士のご著書に関するつぶやきに触発されて拝読。担当編集者を口説いて、『天才 勝新太郎』のレビューをさせていただきましたのでご連絡しました。
媒体は光文社「小説宝石」今月号です。
もし、入手できなかった場合を考えて、下記に原稿を貼り付けておきます。ご笑覧いただければ幸甚です。
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「小説宝石」3月号「新刊ブックガイド」欄 大多和伴彦
『数えずの井戸』京極夏彦 中央公論新社 2100円
遅ればせながら、昨年の邦画界No1問題作『愛のむきだし』をDVDで鑑賞、4時間に及ばんとする長尺を一気に見せてしまう園温監督の豪腕に圧倒された直後に届いた本書もまた、8百頁弱——今度はあやかし語りの天才が七年ぶりものした活字で掘られた悦楽の井戸に突き落とされることとなった。江戸怪談シリーズ第三弾と銘打たた本書が下敷きにしているのは「皿屋敷伝説」。全国に無数にあると
いうこの怪奇譚を丁寧に拾い上げ換骨奪胎して構築された物語は、随所にちりばめられた仕掛けと、考え抜かれた人物設定(主要人物の「数えること」との関わりの違いが秀逸)によってあやしく、悲しく、そして美しい「伝説誕生秘話」となった。冒頭でふれた映画とは
まったく異なるが、味わったあとに現実社会がそれまでと違った様相に見えてくる余韻を漂わす「愛の物語」の傑作である。
『天才 勝新太郎』春日太一 文春新書 (987円)
本書もまた3百頁超! 昨今のブームで書店平台を席巻する新書の多くが厚みも中身も薄っぺらになっている中、大健闘している一冊。長島茂雄並みにその破天荒な挿話が面白おかしく人の口にのぼることの多い男優の、ほとんど語られることのなかった映画監督・プロデューサーとしての顔が、彼とともに現場に立ちあった者たちへの聞き書きや、残された資料によって描かれている。その細やかすぎるほどの目配り、創作への愛はM・ジャクソンの『THIS IS IT』の衝撃にも似た感動を読む者に与えるだろう。と同時に、天才の姿を執念で活字化した著者の溢れんばかりの勝への「愛」が横溢した傑作評伝、である。
『奇跡の画家』後藤正治 講談社 (1785円)
神戸でギャラリーを併設した書店を営む男が出会ったひとりの男。彼は四十九歳までどこにも作品したことのない無名の画家だった。だが、その絵の素晴らしさといったら——。経営者は個展を企画し、その成功により画家は多くの人の絶賛を浴びることになる。が、このノンフィクションが綴ろうとしたのは奇跡の成功譚ではない。ひとり
の画家の絵が、さまざまな場所で、さまざまな人びとの心に、芸術的な面だけではない感動をどのように与えていったかをたどったものだ。口絵の作品写真を繰り返し見ながら作中の人間ドラマを読み終えたとき、私の心の中にも小さなともしびののようなものが灯った気がした。(了)
ご丁寧にありがとうございます!
「小説宝石」での御書評は拝読しております。
お褒めいただきまして、誠に光栄であります。
今後ともお引き立てのほど、
どうぞよろしくお願いいたします。