時代劇・日本映画・テレビドラマなどの研究家・春日太一のブログです。
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文春の編集担当I女史に誘われ、
昼から劇団民藝の舞台「巨匠」の千秋楽へ。
いやあ、凄かったです、大滝秀治。
余計な芝居を入れずに、ひたすらシンプルに伝える姿勢に感銘。
ちょっとした動作だけで一瞬のうちに舞台の空気を変えてしまうといいますか。
空間から他の一切が消えて、
まるで客席の自分と直接に相対しているような錯覚に浸り、興奮してしまった。
さすがに「勝新太郎が最も信頼した役者」の一人だけある。
(ちなみに大滝は勝の初監督作「顔役」で初めて映画の大役に抜擢。
以来、本格的に映画界に参入し、
勝の第二回作「折れた杖」でもラスボス役で出演。
「子連れ狼」との東宝二本立て時代は大滝を若山富三郎と取り合いになったという)
なんか最近の舞台は内輪受け狙いの小芝居ばかりで辟易していただけに、
久々に本物の迫力を体感できて幸せだった。
ここんとこの舞台って、
「いかに細かく埋めていくか」
ばかりに気が行き過ぎている。
でも、そうじゃないんだよなあ。
じっくり溜める。じっくり伸ばす。
たたずまいだけで魅せる。
そういうユッタリとした芳醇な空間こそ舞台に欲しい。
ホント気ぜわしい芝居ばかりになりました。
今の役者さんたち、つまらんエッセイやブログを書いてるヒマがあったら、
こういうレジェンドたちの舞台や芸談に触れるべきかと。
「昔のこと」ってだけで敬遠してたらモッタイナイ!
今とは比べものにならないほどの刺激がそこにはある。
今かかえている答えのヒントはいつも過去にある。
最低限、私はいつもそんな思いを込めて本を書いていたりする。
「昔、こんなに命を賭けた人(たち)がいたんだよ。
あなたたちはどうなの?
もっと戦おうよ!」
と。